手前どもは今も昔も、家畜商が本業ですが、当店のルーツは精肉店を営んでいた昭和30年代までさかのぼります。
その後、昭和40年代に入って大衆食堂を開店。通称「ダンプ街道」と呼ばれた舗装されていないジャリ道沿いで、トラックの運転手や現場仕事の職人さんたちを相手に商いを続けていました。
当時のお品書きは、カレーライスやラーメン、丼物や定食が中心で、中でもカレーライスは人気メニューの一つでした。その秘密は、肉も野菜もたっぷりでボリューム満点だったから。体力が資本の職人さんに対するサービス精神の現れで、こうした採算度外視の振る舞い方は、現在の店舗にも受け継がれていると思います。
ちなみに当時、牛肉はまだ貴重品だったことから、肉は豚肉100%だったとか(笑)。それでも安くて、うまくて、ボリュームたっぷりの「肉屋のカレーライス」は人気が高く、従業員のまかない料理としても好評でした。
当店のまかないカレーが劇的に進化したのは昭和50年代に入ってからです。店のコンセプトを大衆食堂から田舎レストランに変え、地元客やゴルフ客を対象にするようになりました。「ステーキ」と「手打ちそば」をウリにする現在のスタイルはこのころ生まれました。
カレーライスはメニューから消えましたが、従業員のまかない料理として少しずつ進化を遂げ、いつしか豚肉に代わって牛肉が入るようになりました。当店は牛一頭丸ごと仕入れ、ステーキ肉やすき焼き・しゃぶしゃぶ肉として加工しますが、その過程で余った部位をまかないカレーの具材として使ったというわけです。
余った部位といっても、直営牧場で丹精込めて育てたブランド牛「前日光和牛」の肉です。しかも、農林水産大臣賞ならびに栃木県知事賞を受賞したお墨付きですから、味に偽りはありません。和牛本来のとろけるような脂の味わいは、こうした部位にも多く含まれています。スパイシーなカレールーと一体になったときの味わいは感動もの。ひと皿に牛肉本来のうま味が凝縮しています。
店では今でも、毎週日曜日のまかない料理はカレーライスです。従業員にとっても楽しみな日で、およそ40人前を大鍋でつくります。ジャガイモやタマネギは自社の畑で収穫したもの。肉はもちろん、当店の看板「前日光和牛」を贅沢に。
休憩時間になるとお腹をすかせた従業員が代わる代わる食堂にやって来ます。それぞれが食べたい量をお手盛りで。楽しそうに、おいしそうに食べている様子はまさに「大家族」といった趣です(笑)。
実はこのまかないカレー、従業員のみならず出入り業者の方々に振る舞うときもあります。まかない料理がカレーの日、昼過ぎにたまたま納品に来た方に「昼ご飯、まだだったら食べていって」といった感じで勧めています。大抵の人は「うまい!」を連発。評判はすこぶるいいですね。客観的な評価に自信を持ちました。
この門外不出のまかないカレーを商品化しようと思った大きなきっかけは、平成21年の「前日光和牛」の商標登録でした。会社としてうれしい出来事であり、これをステップに新たな事業にチャレンジしたいという思いもありました。
これまでのまかないカレーをさらにブラッシュアップし、おいしさを極め、最もウリである「前日光和牛」の存在感をドーンと強調。和牛肉がゴロゴロ入った絶品ビーフカレーが誕生しました。発売後、年間1万食以上を売り上げるなど評判も上々で、オンラインショップでも注目されるようになりました。
今後は味のバリエーションを増やすなど、ラインナップの充実を図っていきたいと思っています。
「おいしい料理を、お腹いっぱい食べてほしい」。大衆食堂に端を発し、安心・安全な手づくりのおいしさを追求してきた私たちの思いは、昔も今も変わりません。
直営牧場で肥育管理する「前日光和牛」を筆頭に、料理の付け合わせに使う野菜は地元産もしくは自社の畑で栽培したものを使っています。例えば、朝採り野菜で漬け込んだ漬け物は色も、味も、風味もひと味違います。また、デザートとして供される黒豆かんてんも一つひとつ手づくりしました。
定食メニューに欠かせない米は、地元契約農家が手がけた味自慢のコシヒカリ。収穫時より石蔵低温庫に保管し、毎朝搗(つ)きたての米を使っています。
ステーキ、定食、御膳・そば、一品料理に至るまで、あえて手間暇をかけるのが私たちのこだわり。味も価格も満足度の高い店を目指しています。